テレビやSNSで、ゴージャスな毛皮の衣装を身にまとっている芸能人やモデルを見て、あなたは何を思いますか?
毛皮に関する意見はさまざまですが、ネット上には「毛皮は残酷ではない」という主張もあります。
「毛皮は残酷ではない」は事実なのでしょうか?
本記事では、毛皮産業の裏側に迫り、その残酷さを明らかにします。
生きたままの動物から毛皮を剥ぐ噂の真相や、毛皮が無くなるために私たち一人一人ができること、つまり「ファーフリー」を選ぶことの重要性についても語ります。
毛皮産業の真実を知り、動物たちのために何ができるのかを考えてみましょう。
本記事では、トリミングサロンを経営して8年目、動物実験の残酷さについて発信している私が、ァッションにおける「毛皮」の残酷さと、本物の毛皮を使わない「ファーフリー」について詳しく解説していきます。
毛皮産業とは?
毛皮産業とは、動物の毛皮を利用する産業のことで、主に衣服やアクセサリーなどのファッション用途に使われます。
毛皮産業に関わる動物は、ミンクやキツネ、ラビットなどの哺乳類や、アザラシやオットセイなどの海洋哺乳類が多くいます。
これらの動物は、専用の飼育場や罠で捕獲され、足や首を挟まれて出血や骨折を起こしますが、すぐに見つかるとは限りません。
動物たちは長時間苦しみ続けたり、自分の体を食べて逃れようとしたりします。
世界動物保護協会(WSPA)の調査によると、2018年には約1億匹の動物が毛皮産業のために殺されました。
この数字は、人間が食用やペットとして飼育する動物よりもはるかに多いです。
また、毛皮産業で殺される動物たちは、自然界で生きることができる野生動物が多くを占めます。
野生動物は、人間と共存することが難しく、絶滅の危機に瀕している種も少なくありません。
毛皮産業は、これらの野生動物の生態系や生息数に大きな影響を与えています。
毛皮工場で飼育された動物は、非常に残酷な環境で生きています。
小さな金属製の檻に何匹も詰め込まれて、運動や日光を与えられずにストレスを溜め込んでいます。
また、食事や水も不十分で、病気や怪我を放置されています。
毛皮工場では、動物の命や感情は一切考慮されず、ただ毛皮だけが重要視されています。
毛皮に使用される動物たちは、非常に残酷な方法で処分されます。以下は一部の例です。
- 電撃殺法:毛皮業界において一般的に使用され、高電圧の電流を動物の鼻腔や肛門に流して、即死させます。
- ガス殺法:密閉した室内に動物を入れ、一酸化炭素や二酸化硫黄などの有毒ガスを散布し、窒息死させます。
- 打撲殺法:動物の頭部に金属バーなどの器具で殴打して、即死させます。
- 窒息殺法:絞め殺したり、首を絞めて過酷な苦しみの中で死なせます。
これらの殺され方は、苦しみ・痛みをともない、動物たちは地獄を味わっています。
必ずしも即死を保証するものではなく、動物たちは苦しみながら死に至ります。
多くの生き物が絶滅の危機にある現在、毛皮を必要とするという理由だけで数多くの動物たちが犠牲になることは、社会的にも環境的にも問題視されています。
日本の毛皮産業事情について
日本における毛皮産業は戦後にかけて盛んになり、最も多い時には4,000ほどの毛皮農場があったそうです。
1971年になるとミンクの毛皮輸出量が88万頭分に。
うさぎの毛皮も含めると、1975年には年間で1,600万頭分以上の毛皮を輸出していました。
中国で毛皮の生産が増えた1990年代後半、日本での毛皮産業は急速に衰退。
2006年にはアメリカミンクが、飼育するのが原則不可である特定外来生物に指定されました。
これがきっかけで北海道にあった毛皮農場も廃業。2006年にはミンク毛皮の海外への輸出もなくなりました。
しかし、ミンクが特定外来生物に指定されたあとも、新潟県でアメリカミンクを許可なく飼育していた毛皮農場が2か所(佐藤農場と大塚ミンクファーム)ありました。
2012年になると無許可でミンクを飼育していると環境省へ通報され、佐藤農場はすぐに廃業。一方で大塚ミンクファームは、通報された後も無許可で飼育を続け2014年に書類送検されました。
しかし大塚ミンクファームは不起訴処分となり、2015年の4月には環境省の許可を得てミンクの飼育を継続。
その後も違法行為を繰り返していましたが、2015年5月には再度環境省に通報され再び指導されています。
結局、2015年の冬には飼育していたミンクを全て屠殺。
一般消費者が大塚ミンクファームに問い合わせると「閉鎖した」という回答があったそうです。
これにて、2016年に日本の毛皮工場は全て無くなりました!
日本の毛皮工場はなくなったものの、日本は毛皮を海外から大量に輸入していて、世界で4番目に多い毛皮消費国です。
2019年度には、約15億ドル(約1600億円)相当の毛皮製品を輸入しました。これでも2006年に比べると毛皮の輸入量は88.65%も減少しています!2019年は日本の消費のために約100万頭もの動物たちが犠牲になっています。
特に中国からの輸入量が多いですが、中国では動物福祉や衛生管理が不十分な状態で毛皮農場が運営されています。
そのため、中国産の毛皮製品には犬や猫などペットとして飼われている動物や絶滅危惧種なども含まれている可能性があるというから恐ろしいですよね。
日本では現在、「動物愛護管理法」という法律がありますが、この法律は主にペットや家畜など人間が管理する動物に関するものであり、野生動物や養殖動物に関する規制はほとんどありません。
また、「種の保存法」という法律もありますが、これは絶滅危惧種など特定外来生物以外の野生動物に関する規制もほとんどありません。
そのため、日本では海外から輸入されたあらゆる種類の毛皮製品が合法的に販売されています。
海外の毛皮産業事情について
近年では、欧米やオーストラリアなど多くの国々で毛皮農場や毛皮製品の販売が禁止される動きが広がっています。
これらの国々では、動物愛護や環境保護といった倫理的な理由だけでなく、経済的な理由や消費者ニーズも考慮されています。
例えば以下のような事例があります。
- イギリス
2000年から全国的に毛皮農場が禁止されており、2018年からロンドン市内では全ての公共施設で毛皮製品の販売が禁止されました。 - オランダ
2013年からチンチラやキツネなど特定種類以外の毛皮農場が禁止されており、2024年までに全て廃止する予定です。 - カナダ
2019年から最大都市トロントで市営施設内での毛皮製品販売が禁止されました。 - オーストラリア
2020年から最大都市シドニーで市営施設内での新品リアルファー製品販売が禁止されました。 - フランス
2025年までに全国的に毛皮農場を廃止することを政府が発表しました。 - イタリア
2021年から全国的にミンク農場を廃止することを政府が発表しました。
これらの事例からも分かるように、世界的な流れとしては毛皮産業への規制や反対が強まっており、日本もそれに追随すべきだという意見も多くあります。
毛皮を生きたまま剥がす動画は本物?衝撃的な映像の真偽と背景
インターネット上には、生きたまま剥がされる動物たちの映像が多数流れています。
その中でも有名なものは、2005年にアニマルライツセンターが中国で撮影したタヌキの映像です。
この映像では、タヌキが金属バーで殴られて気絶させられた後、足首から吊り下げられて生きたまま皮を剥がされます。
その様子を見ている人々は笑っており、タヌキは苦しみと恐怖で悲鳴をあげます。
最後には頭部だけ残ったタヌキがカメラに向かって目を見開くシーンで終わります。
この映像は世界中で衝撃を与えましたが、毛皮業界はこれを否定しました。
日本毛皮協会は「この映像は事実ではなく、動物養殖の現場で撮られたものではない」と主張しました。
しかし、この主張には根拠がありません。
実際に中国では他にも多くの動画や写真が撮影されており,それらはすべて同じような方法で生きたまま剥がされる動物たちの姿を捉えています。
また、中国以外でもカナダやフィンランドなどで同様の虐待が行われていることも報告されています。
このような方法で毛皮にされる動物は、主に中国や東南アジアで飼育されている犬や猫やウサギなどです。
これらの国では動物保護法が不十分であり、毛皮業者は自由に動物を扱うことができます。
日本では生きたまま剥がすことは禁止されていますが、中国や東南アジアから輸入された毛皮商品は日本でも販売されています。
その多くはラベルに偽りの表示をしており、消費者は知らず知らずのうちに生きたまま剥がされた動物の毛皮を身につけていることもあります。
なぜ、生きたまま皮を剥がされると言われているかというと、殺して時間が経つと死後硬直により皮を剥がしにくいこと、さらに殺処分する費用を節約するためとされています。
しかし全身の筋肉まで硬直が及ぶには、死んでから最大で12時間もかかるため、この理由で生きたまま皮を剥がされるのはデマではないかとも言われています。
嘘か本当か、理由は何にしろ、動物たちは毛皮のために残虐極まりない方法で殺されていて、 剥がされた後もしばらく生きている動物は、血だらけで震えながら死を待つしかありません。
毛皮を着ることの社会的・環境的影響
毛皮を着ることは、自分だけの問題ではありません。毛皮産業は、社会や環境にも悪影響を及ぼしています。
例えば、毛皮工場では、大量の化学物質や廃棄物が排出されています。これらは、水質や大気を汚染し、人間や動植物の健康に害を与えています。
また、毛皮工場では、多くのエネルギーが消費されています。
これは、温室効果ガスの排出量を増やし、地球温暖化の原因になっています。
さらに、毛皮工場では、希少な動物種が乱獲されています。これは、生態系のバランスを崩し、生物多様性の危機につながっています。
毛皮に代わるエシカルな素材とファッションの提案
ここまでの開設で、毛皮産業が、動物の命や環境に大きな影響を与えていることがお分かりいただけたでしょうか。
毛皮はファッションのアクセントになると考える方も入るかと思いますが、毛皮を着なくてもオシャレを楽しむことはできます。
今回は、毛皮に代わるエシカルな素材とファッションの提案をします。
では、毛皮を着ないとしたら、どうやってオシャレを楽しめるでしょうか?
実は、毛皮に代わるエシカルな素材やファッションはたくさんあります。
例えば、フェイクファー(人工毛皮)やベジタブルレザー(植物性レザー)などです。
これらは、動物由来ではなく、植物や再生可能な資源から作られています。
また、デザインや質感も本物の毛皮やレザーに劣らず、高級感や暖かさも兼ね備えています。
さらに、これらの素材は環境にも優しく、廃棄物や化学物質の排出量も少なく、エネルギー効率も高いです。
これらの素材を使ったファッションは、毛皮フリーなコーディネートの基本です。
また、カラーや柄、アクセサリーなどを工夫することで、毛皮フリーなコーディネートをもっと楽しむことができます。
毛皮を買わないことでできる動物保護の取り組み
私たち消費者が毛皮を買わなくなれば、毛皮産業を止められる可能性があります。
毛皮を買わないことで、需要が減ります。需要が減れば、供給も減ります。供給が減れば、殺される動物も減ります。
つまり、私たち一人一人の選択が、動物の命を救うことができるのです。
また、毛皮を買わないだけではなく、ファーフリー(fur-free)という運動に参加することもできます。
ファーフリーとは、「毛皮反対」を意味する言葉で、毛皮産業に反対する人や団体が使っています。
ファーフリーに参加する方法は、以下のようなものがあります。
- 毛皮産業の実態を知り、周りの人にも伝える
- 毛皮産業に反対する署名やデモに参加する
- 毛皮産業に関わらないブランドや店舗を支持する
- 毛皮産業に関わる政治家や企業に抗議する
- 毛皮産業に関する情報をSNSやブログで発信する
ファーフリーに参加することで、私たちは動物の権利や福祉を守ることができます。
毛皮に反対している芸能人やデザイナー
以下は、毛皮の使用に反対していると公言しているデザイナーやブランドの一部です。
- プラダ
2019年5月に毛皮反対の国際連盟ファーフリーアライアンス(Fur Free Alliance)と協力し、2020年春夏コレクションから毛皮を使用しないことを宣言しました。 - カルバン・クライン
1994年に毛皮を使用しないことを宣言しました。 - ステラ・マッカートニー
2001年にブランドを設立して以来、完全に毛皮とレザーの使用を避けています。 - ラルフ・ローレン
2006年に毛皮の使用をやめました。 - ヴィヴィアン・ウエストウッド
2007年に毛皮の使用をやめました。 - トミー・ヒルフィガー
2007年に毛皮の使用をやめました。 - ジョルジオ・アルマーニ
2016年に毛皮の使用をやめました。 - マイケル・コース
2017年に、2018年末までに毛皮の使用をやめることを発表しました。 - グッチ
2017年に毛皮の使用をやめ、2018年春夏コレクションからは毛皮の使用を禁止しました
これらは一部の例であり、他にも多くのデザイナーやブランドが毛皮の使用に反対しています。
これらのブランドは、動物保護と環境保全への配慮から、自社製品での毛皮の使用を避けています。
これらの動きは、消費者がよりエシカルな製品を求める傾向が強まっている現代社会において、ますます重要性を増しています。