中国は、世界有数の化粧品市場であり、これまで輸入化粧品に対して動物実験を義務付ける厳しい規制が敷かれてきました。
そのため、日本国内で動物実験をしていない企業であっても、中国に商品を輸出している企業は「動物実験をしている企業」と判断してきました。
しかし、2021年5月より規制緩和が始まり、一定の条件を満たす一般化粧品については動物実験が免除されるようになりました。
本記事では、これまでの背景、現状、最新情報、そして今後の展望について、分かりやすく解説します。
中国への輸入化粧品に対するこれまでのルール
まず、昔も今も、海外から中国へ輸入される商品の中で、以下の商品には動物実験が不要です。
- 中国国内で製造された一般化粧品
- 海外向けに製造された一般化粧品
- 一部の越境ECサイト経由での販売商品
しかし、海外から中国へ輸入される一般化粧品や特殊化粧品には、動物実験が義務付けられていました。
特殊化粧品とは、一般的な美容目的の化粧品とは異なり、特定の機能や効能を目的として開発された製品を指します。たとえば、毛染め、パーマ、シミ取り・美白、日焼け止め、育毛剤、除毛剤、エイジングケア製品、ニキビ治療薬などが該当します。
具体的な実験内容は以下の通りです。
- 目の炎症を確認するテスト1種類
- 肌の炎症を確認するテスト2種類
つまり、それぞれの実験でウサギ3匹が犠牲となっており、最新のデータによると、2013年の実績に基づいて、年間で約12万匹の動物が動物実験のために使用されている計算です。

日本では動物実験が行われていない商品であっても、中国に輸入する際には改めて動物実験が求められるケースが多く、完全に「動物実験をしていない商品」とは言えなかったのです。
2021年5月からの規制緩和とその条件
2021年5月1日より施行された「化妆品注册备案资料管理规定」により、一般化粧品に対しては、条件を満たす場合に動物実験が免除されるようになりました。
輸入される一般化粧品が動物実験免除の対象となるためには、以下の条件を同時にクリアする必要があります。
免除条件 | 免除条件内容 |
---|---|
生産企業の資格認証 | 所在国(または地域)の政府主管部門が発行する「生産品質管理体系に関する資格認証」を取得していること。 |
安全性リスク評価の充実 | 製品の安全性リスク評価により、製品安全性が十分に確認されていること。 |
特定の対象外 | 下記に該当しないこと。 ・乳幼児や子ども向けと宣伝されている製品 ・安全性が確認されていない新規化粧品原料を使用している製品 ・定量的評価により、届出責任者や生産企業が重要な監督対象にリストアップされている製品 |
この規制緩和により、中国市場での動物実験の負担が軽減されることが期待されました。

しかし、上記の条件は非常に厳しいため、条件をクリアできる企業は限られています。
製品分類と変更点のまとめ
2021年5月以前と、それ以降の対応の変更点は以下の通りです。
製品分類 | 従来の対応 | 2021年5月以降の対応 |
---|---|---|
国内製造一般化粧品 | 動物実験免除(2014年以降適用) | 引き続き動物実験は不要 |
輸入一般化粧品 | 動物実験必須 | 一定条件下で免除可能 (認証取得と安全性評価が必須) |
特殊用途化粧品 | 動物実験必須 | 変更なし (安全性の確保のため引き続き実施) |
海外ECサイト経由購入 | 販売目的が中国国内でなければ免除 | 変更なし |

特に、特殊用途化粧品は、引き続き動物実験が必須となります。
中国国内における動物実験関連の管理体制
中国では、動物実験に関して以下の管理体制やガイドラインが設けられていますが、実効性や監視体制に関しては改善の余地があるとされています。
管理項目 | 概要・現状 |
---|---|
動物実験者の免許・資格 | 国家レベルでは資格制度の整備を目指しているが、義務化は進んでおらず、一部の省でのみ資格証書が要求される。 |
施設の登録・届出 | 施設の衛生管理については一定の基準が設けられているが、厳格な登録や届出制度は整っていない。 |
実験計画の許可・認可 | 多くの省で、実験を行う組織は許可証の取得が必要ですが、個々の実験ごとに審査が行われることは稀です。 |
第三者による査察制度 | 地方の政府機関や科学技術庁が査察を担当する場合がありますが、全国的な一元管理体制には至っていません。 |
動物実験委員会の設置 | 委員会の設置は「指導的意見」として求められているのみで、強制力が不足しています。 |
実験記録の管理と罰則制度 | 実験動物の質や病死原因の記録は義務化されていますが、罰則に関しては省ごとにバラつきがあります。 |
また、世界動物保護協会(WAP)の評価では、中国も日本も欧州諸国に比べて動物実験の保護レベルが低いとされ、さらなる改善が求められています。
中国の動物実験に関する最新情報
2024年末の最新報道によると、中国国家薬品監督管理局(NMPA)は、動物実験に関する規制をさらに緩和する方向で見直しを検討しています。
これにより、これまでと比べて免除される条件がもっと簡単になったり、審査の手続きが改善される可能性があり、将来的にはより多くの製品が動物実験を実施せずに安全性を確認できるようになるかもしれません。
また、国際的な動向としては、欧州連合(EU)ではすでに化粧品に対する動物実験が全面禁止されるなど、動物実験をなくそうとする動きが強まっています。

中国もこの国際的な流れの影響を受け、今後は動物実験を全面的に廃止する方向で議論が進むと予測されます。
私たち消費者ができること
私たち消費者ができることとしては、まず依然として動物実験が義務付けられている「特殊化粧品」を、中国へ輸出している企業の製品を買わないことです。
また、気になる商品があった場合には、企業に直接問い合わせて「中国に商品を輸出しているか」を確認しましょう。
「輸出している」と回答があった場合は、「中国が定める一般化粧品の動物実験が免除される条件をクリアしていますか?」と確認し、以下のような回答があった場合には購入を控えましょう。
- クリアしていません
- 現在中国では一般化粧品に対する動物実験はされていません
- 無回答
もし「中国での販売はしていない」と回答があった場合は、その企業の商品を積極的に購入することで企業を応援することができます。

企業からすると、消費者が商品を買ってくれないと利益がなくなってしまうので、私たちが知識を持って実際に行動することが非常に大切です。
中国における動物実験の現状 まとめ
本記事では、中国における動物実験の現状について解説してきました。
これまで中国では、輸入化粧品に対して動物実験が義務付けられていましたが、2021年の規制緩和により、一定の条件を満たせば動物実験が免除されるようになりました。
しかし、規制緩和後も特殊用途化粧品は今も実験が必須であり、免除条件も厳しく、多くの企業にとって大きなハードルとなっています。
また、中国国内の動物実験の管理体制は不十分であり、制度の実効性や監視体制の改善が求められています。
こうした状況を踏まえ、消費者としては、輸入化粧品の動物実験の有無を企業に確認し、越境ECなど動物実験を回避できる販売ルートを選ぶことが重要です。
本記事を参考に、クルエルティフリーな製品を選び、動物実験廃止に向けた動きを後押ししていきましょう。